訪問看護ステーション設立の現状
現在、全国で7,000の事業所(平成26年現在)がありますが、圧倒的需要があるにも関わらず事業所数の整備が追い付いていない状況にあります。
厚生労働省の介護保険事業状況報告によると、75歳以上の人口の21%が看護認定を受けているとのことで、これは300万人を超えます。実際に訪問看護が必要となるのは要介護3以上として計算しても150万人が訪問看護を必要とする見積もりになります。
団塊の世代の方々が後期高齢者となる2025年は、超高齢化社会のピークを迎えます。国(政府)は、それまでに現在の1.5倍(10,000事業所超)の設置の必要性をうたっています。
まさに国の方針は「在宅医療」の推進です。そしてその中心的な位置づけとされているのが、訪問看護なのです。
参入ハードル
国が在宅医療推進を進めている反面で、実は、訪問看護ステーション開設に関しては、他の看護・介護事業に比べ、開業要件が緩い状況にあります。また、医療関連事業者でないと参入できないということもありません。
また、他のサービスのような総量規制や厳しい要件が設定される事業に比べ、参入ハードルが低いという特徴もあります。
また、新規事業として取り組む方はもちろんのこと、現在、既に介護事業を行っている方においては、複合的な事業展開を目指すうえで、非常に参入メリット(介護と医療の相乗効果)があり、本業の業績安定にもつながります。
介護事業(小規模通所介護)からの参入
昨今、「通所介護(デイサービス)」や「訪問介護」の事業所は、全国に30,000件を超え、その数はコンビニエンスストアをしのぐ数となっています。斯様な状況で地域によっては飽和状態にあるのが現状です。
来年度の介護保険制度改正に伴い、通所介護においては大幅な報酬単価の減額が決まるなど、大きな事業の転換期といえる時期に差し掛かっています。
今後は介護事業のみを行っていては、経営の安定は図れません。
そこで新たに訪問看護事業などの医療系サービスを並行して展開し、利用者の方々の利便性を向上させ、より一層、地域の実情に即した安心・安全につながるサービスを提供することで、ワンストップに対応する事業として相乗効果による安定化を図ることが可能になります。
お泊りデイサービスで考えるのであれば、同法人・グループとして訪問看護事業開始後は、日中のみのデイサービスへの転換も考えられ、夜間帯に必要とされる人員が不要(日中帯のみ)、職員の定着率、業務の効率化が図れます。
しかし、この“泊り”を行わない以上、一時的には売上が下がる事も予想されますが、法的リスク、コスト削減を可能とする事で利益率の向上につながるビジネスモデルの構築が可能となります。
訪問系と通所系の連携により期待される効果
1. 生活場面で明らかになった課題を通所に反映
訪問することにより、実際の生活場面の把握ができるため、生活場面で明らかになった課題を通所に反映させることができる。
例えば生活機能の維持・向上のための機能訓練を行うなど、訪問と通所を効果的に組み合わせることにより、在宅での生活を継続しやすくすることができる。
2. 通所に向けてのタイミングを的確にとらえる
閉じこもり者や重度者などに対し、段階的に同一の担当者が訪問での利用者の心身の回復状況を把握しつつ、通所に向けてのタイミングを的確にとらえることが可能。
支援に活かすことができる。(重度の利用者が通所系サービスを利用できるようになることで、重度者の孤立の防止や家族の心理的負担軽減を図ることができる。)
3. 多様なニーズへの対応
訪問系と通所系の連携、もしくは併設で、事業所間での職種の有効活用が図れ、重度者や認知症者などの多様なニーズへの対応や利用者の有する能力を最大限に引き出すケアなど、効果的・効率的なサービスの提供が可能となる。